ほっとする灯りでお出迎え
私たちの生活にとって「灯り(あかり)」はなくてはならないものです。そもそも人類の最初の灯りとは、「火」の発見によるものでした。「食べ物を調理したり」「闇をあかりで照らす」という生活様式が始まったのです。そして人々は知恵や工夫を凝らし、たいまつや篝火から、ろうそくやランプ、ガス灯、そしてわが国では提灯なども用いられたのち、現代の電気に至るようになりました。しかしながら、電気の使い方はその国によって様々。戦後の日本建築における室内照明は、一部屋に対してその中心に大きな照明をつけるのが主流でした。しかし私達日本人も、部屋の片隅を照らす間接照明をうまく活用する欧米のライティング法を少しずつ取り入れるようになり、昨今ではいかに「くつろぎ」を演出する照明にするかが工夫され始めています。今回はほっとする灯り計画を一緒に考えてみましょう。
上階に続く階段を美しく灯すアイデア
灯りが多いリビングからいざ2階へ上がろうとする時に、味気のない灯りだと気分が沈みますよね。「今から眠りにつこう」「自分の部屋に行ってくつろごう」という時に、オレンジの間接照明が階段を美しく照らしてくれたら、ほっと安心するものです。階段のつきあたりが“壁”というご家庭も多いと思いますが、上部に少し自然の光を入れてあげる構造にすれば、日中もほのかな光が差してきて、まるでライティングしているような、効果的な演出となります。ロフトのある家や、天井までがスロープになっている家なら、間接照明の照らし方次第で、とてもロマンティックな雰囲気づくりが楽しめます。また、階段をシースルーにして裏側にライトを入れると、ステージのように幻想的になるだけでなく、足元が明るくなり、お子様から高齢者まで家族にやさしいライティングになります。
ハウス全体を癒しの灯りで統一するには
家の外観をデザインするということは、「家づくり」において大変重要です。第一印象が決まるといっても過言ではない外観ですが、ライティングの仕方にひと工夫するだけで、夜の印象も素敵に演出することができます。たとえば、玄関周りの植栽にできるだけ低い間接照明をあてたり、家のシンボルとなるような木があれば、下からライトアップすることで、家全体を心地良い雰囲気に包むことができます。表札や郵便受けなども部分的にライトアップするだけで、やさしい印象を表現できます。また、窓の大きいリビング・ダイニングルームの窓辺に間接照明をめぐらせれば、家の中のメインライトをつけていなくても、人の気配を漂わせられるので防犯上も安心ですし、外からも「ほっとする灯り」を演出できるので便利です。2階などの窓辺にも間接照明が有効的です。
ほっとする灯りでお出迎え
家族の出入りが最も多い“玄関”のライティング計画は、家の中でもとても重要とされています。昨今では、人の気配によって「自動で点灯する」センサーライトを取り入れるご家庭がとても多くなっています。そのセンサー機能を利用して、間接照明を効果的に使ってみませんか?たとえば玄関のドアを開けると、まずメインのライトが点灯し、靴を脱いで奥のリビングに進むにしたがって、廊下の間接照明が順番に、自分を照らしていってくれる。まるで、「おかえりなさい」と言ってくれているような、安心感が生まれます。廊下ごとに、このようなセンサーの間接照明を利用すると、電気代の節約だけでなく、次の部屋に進むのが楽しくなってくる演出です。しかし、お客様を招く際には、廊下が暗いと印象が良くはないのであらかじめ間接照明を照らしておくのがいいかもしれません。高齢者やお子様がいらっしゃるなら、階段下にもセンサーライトがあると安心です。
お庭やバルコニーのライティング計画
近年、自宅でバーベキューを楽しむご家庭が増えています。夜の食事にゲストをおもてなしする際には、特に玄関までのアプローチの照明計画はとても大切になってきます。「およばれ」に期待感が高まる演出としては、足元を優しく照らしてくれる間接照明の存在。植栽に沿うような感じでアーチを描くようなライティングがとても美しく、さらにセンサーライトにすれば防犯上も安心です。それでは少し、お庭周りのライティングを紹介しましょう。
少しの水と照明でお庭のムードづくり
たとえ広いお庭がなくても、少しのスペースがあれば、癒しの演出は叶うものです。たとえば、玄関口にちょっとした坪庭を造るだけで、そこに住む家族はもちろん、訪れたゲストをほっとさせることができます。つくばい(石や壷に水を溜めて使う和風の手洗い)を置いて、水のせせらぎに耳を傾けるのもいいですね。さらに“ほんのりとした灯り”を水のそばに置くと、光が水面に浮かび上がって、とても幻想的になります。水をはった壺や大皿を下からライトアップするだけで、屋内外にかかわらず効果的な演出ができます。ちょっとのスペースで“水と灯り”の競演を楽しんでみませんか。
ウッドデッキを優しく照らす
ご家庭で手軽に「アウトドア気分を楽しめる」として、ウッドデッキを取り入れるスタイルに人気が高まっています。日中は問題がないのですが、暗くなると段差には気をつけたいところです。安全性も考えて、いかにライティングを工夫するかが重要になってきます。たとえばイラストのように、埋め込みの間接照明で縁取りをすることによって、転倒を防ぐことはもちろん、カフェのような演出を楽しむことができます。お子様や高齢者のいるご家庭ではぜひ取り入れていただきたいアイデアです。さらに最近では、コンセントの要らない充電式のLEDライトなどが登場していますので、自由なスタイルでウッドデッキ周りを照らして、雰囲気づくりを楽しみたいものです。ウッドデッキが快適になると、天候の良い日に晩ご飯や、ちょっとした晩酌などもできて毎日が豊かになるでしょう。
和紙からこぼれる灯りでやすらぎの時間
つくりつけの間接照明は、室内の雰囲気づくりには役立ちますが、縁側や坪庭ではちょっとした置きタイプの照明が風情を漂わせてくれるはず。たとえば、和紙でできたライトなら、紙から漏れる微妙な光の陰影で和の“侘び寂び”を演出することができます。昔から日本人が親しんできた素材「石」や「和紙」を、灯りに使うことで、“和み”の効果をプラスするのです。仕事で疲れた体をほっと休めたい時、縁側に座ってビールやお酒をたしなんだり、ペットとじゃれあうだけでもやすらぎの時間を過ごせるものです。和の素材を使ったライトは、和のインテリアだけでなく洋風の部屋にも意外になじませることができるので、ベッドルームや書斎など、癒しをプラスしたい時にぜひ活用させてみましょう。
サンキャッチャーを窓辺につけて自然の光をオーロラ風に楽しむ
サンキャッチャーは直射日光のあたる窓辺に吊るしたり、置いたりして光の反射と、あふれる虹を楽しんでください。東の窓は1年を通じて低い角度で陽射しが入ってくるので東の方向の窓に飾るのがオススメです。けれど、日当たりの悪いところでも、風水的に陽の気を導く役割をしてくれるとも言われています。窓辺を綺麗に飾り、クリスタルガラスを通して太陽の光を虹色の煌めきに変えて楽しむインテリアアクセサリーです。風などで揺れたりすると、より一層煌めきが増します。また欧米では「Rainbow Maker」とも呼ばれ、昔から光のアクセサリーとして親しまれています。
クリスタルガラスが太陽に反射して七色にきらめく
日中は自然の光でエコ計画を
照明は私たちの生活にとって不可欠なものですが、日中はなるべく自然の光を取り入れて節電したいものです。近年ではわざと屋根をななめにつくって天窓を楽しんだり、吹き抜けの最上に窓を取り入れることで家全体に光を吹き込んだり、と明るい家づくりが積極的に取り入れられています。特に天窓は、普通の窓に比べて風を取り入れやすく、3倍もの採光効果があり、敷地面積の狭い家や大きな窓が取れない家に大変メリットがあります。
キッチンのダウンライト位置を賢く
間接照明は雰囲気を良くするだけでなく、機能的なライティング方法としても効果的です。下のイラストのように、キッチンの戸棚の中が見やすいように、手前の天井を掘り上げて、直管型の蛍光灯を取り付けています。ゲストからは見えにくい角度になっているため、裸の蛍光灯のまま取り付けていますが、さまざまな生活シーンでむきだしの蛍光灯が見えてしまったりする場合は、乳白カバーやルーバーを付けて、光源が直接見えないようにするといいですね。