良いものを永く使うインテリア
日本の住宅が一気に発展した戦後の高度成長期。工期を短く済ませることで安価に出来る住宅を作り続けた結果、一世代で建替えるというスタイルが芽生えました。しかし、それから半世紀が経ち、地球環境問題が深刻化していく現在、これまで通りの”作っては壊す”というサイクルではいけないと志向が変わり始めています。何世代も継がれていくような良品な住宅を建てることでヨーロッパのように手入れをしながら大切に、永く使っていく住まいが提案され始めています。歴史が深いヨーロッパの住宅のように、堅ろうな構造はもちろん地震や火災から命を守り続けることが条件。さらに内装や設備は、愛着をもって使い続けられ、維持管理や取り替えが安易にできることが良いとされています。そこで、”良いものを永く”とはどんなことなのかを考えていきましょう。
永く使える家具の見分け方
ヨーロッパにおいては、家具として最も価値のあるものは、二世代前の時代から継承し使い継がれている家具だと言います。そんな、時を語るものと並んで調和するように、新品でも新しく見えない仕上げや細工をしたものがヨーロッパには実に多いのです。それではその家具を少しでも永く使っていけるよう、購入するときにどのように気をつければいいでしょう。材質のクオリティはもちろん、その材質が住んでいる場所の気候に合うかどうかも重要です。湿度によって家具が傷まないかをはじめ、どの部屋で使う予定のものか、すでに今ある家具と調和するかどうかも想像しましょう。また質感や細工への美しさ、手作りのこだわりなどを見極めていきたいものです。
旧いものと新しいものを融合したスタイルが新鮮
ヨーロッパの暮らしでは、何気ないモダンインテリアの中で、100年以上は経っているアンティーク家具が存在感を醸し出していることが多々あります。そのように新旧のものを織り交ぜるスタイルを”エクレクティック(折衷主義)”といいます。
建築用語事典では、「ヨーロッパの過去の様式にとらわれず、自由に多様な様式を洗濯して組み合わせる態度のこと」とあります。そのルーツには、英国などを代表とするヨーロッパの考え方が流れています。一般住宅でも100年200年は当たり前で、古いものを好み、家具も使い捨てではなく世代を超えて受け継がれるものを選ぶとい、長年の積み重ねの中で自由なスタイルが交わり続けました。また大航海時代より、貿易で富を得た貴族や商人らは、海外から持ち帰ったものを所狭しとディスプレイし、それが今に至るまで幅広く奥深いインテリアへと発展したのです。
世代を継いで使う生活道具
家電製品を頻繁に取り替える我が国に対して、ヨーロッパでは、こまめに修理をしながらいかに永く使うか、という考え方が根底にあるゆえに、世代を超えて使い続けていく道具がとても多いことに驚かされます。たとえば、フランスの家庭では、子供がある程度成長すると、まずは専用のたんすを用意し、幼いときからおしゃれを学び、部屋を片付けることしつけとしています。
日本では学習机をまず用意するので、考え方が随分と違いますね。そしてキッチン道具のひとつにしてもそう。銅の鍋や鉄のフライパンなどを、日々磨きながらていねいに使っていくのです。材質の良いものを選ぶと、味わいを増しながら風合いも違ってくるから不思議です。玩具は永く使える木製のものを好み、愛着感や色合いの変化を楽しみ、楽器は使い込むことで音色の変化を楽しみ、楽器は使い込むことで音色の変化を楽しんでいきます。使う人が変わっても”そこにあり続けることの美しさに価値を見出す”という、そんな姿勢には、私たちにも見習わされるものがありますね。
和の良さを現代の暮らしに取り込む
モダンな生活スタイルに慣れてきた新しい世代も、旧い家の実家に戻ると「なぜかリラックスできる」のは、やはり日本人ならではの感覚なのでしょう。近頃では、積極的に和室を設置する家庭も多いことから、たたみをはじめとする和の住まい方が再認識されています。そこで今回は、日に日に見直されてきている、和室にちなんだナチュラル志向のおそうじ法をご紹介します。
たたみで楽しむ親子の生活
なぜ日本人は、長い歴史のあいだ、そしてこれまでもずっと、たたみの生活を好んできたのでしょう。本能的に「リラックスしてしまう気持ち」には、機能的にもれっきとした理由があります。畳表に使われているい草は夏の暑いときには湿気を吸い、冬の寒いときには湿気を放出するという、いわばスポンジのように自然に呼吸してくれる特性があります。それによって夏は比較的涼しく、冬は比較的温かく過ごせるので、湿度の高い日本の気候において、人々にとっても心地よく感じるのは、ごく自然の形だったのでしょう。さらにはい草の香りや触り心地に癒しの効果も得られるため、子供にも害がなく、子育てにも重宝されてきました。転んでも安全で、寝かせる際にも空気が良いためか、なぜか日本の子供たちは和室を好んでいるようです。近年では、ヒトに有害な二酸化窒素を吸着する働きがあると発表されました。空気を浄化し森林浴と同じようなリラックス効果をもたらすので、地球環境を考えたエコ素材として、海外でも注目され始めています。
昔ながらの自然派おそうじ法
たたみはフローリングほどほこりは舞にくいですが、お子様や人がよく出入りするところでは、美しい目の状態を保つためにも頻繁にい手入れしたほうが良いでしょう。掃除機だとたたみが傷みやすいので、普段の塵やほこりは箒(ほうき)でこまめに掃き、ハタキで細かいところのほこりも取り除きましょう。昔ながらの箒やハタキはさっと取り出せ、夜でも静音で行えるので近隣にも迷惑がかからず、また電力を使わないので環境にも良い方法として新しい世代にも好まれています。い草の畳表は、水分を嫌うので濡れた雑巾で拭くのではなく、から拭きすることをおすすめします。お子様が食べこぼした後の汚れは、石鹸水で拭きとったあと、乾いた雑巾で拭きます。インクなどの汚れは米粒をこすりつけ拭きとったあと、乾いた雑巾で拭きます。一年に一度は陰干しをして風に当てることで、たまった湿気を取り除けるため、清潔に美しく長持ちします。
<化繊のハタキ編>
ハタキは、柄をくるくる回すことで静電気を起こすので、ぬぐうように拭くとほこりを絡め取ってくれます。家具と家具、壁と家具のすき間、家電製品などをそうじするときに便利です。
<箒(ほうき)編>
畳を掃く時は、先にハタキなどでほこりを落としてからほうきでたたみの目に沿って、部屋の隅から掃いていきます。フローリングも、最初にほうきで掃いておくと掃除機をかけてもほこりや毛が舞わないのでペットがいる家でも重宝します。
手作りのナチュラル洗剤で拭きそうじ・消臭
日本人が永く行ってきた”拭きそうじ”は、たたみにも応用することができます。科学的なものより、手作りのナチュラル洗剤なら安全なので、お子様と一緒に楽しく拭きそうじができます。
- 重曹水—弱アルカリ性で、湿気を取り除く効果や消臭・研磨作用もあります。重曹を4%の濃度で水で薄めます。汚れにスプレーでひと吹きし雑巾で拭いて仕上げます。
- 酢(クエン酸)水—消臭や抗菌作用があるお酢は、あらゆるおそうじに活躍。酢を1〜2倍の水で薄めます。クエン酸水も重曹水同様にスプレーでひと吹きし雑巾で拭いて仕上げます。
たたみを拭くときは、集めたほこりやゴミを残さないよう、余分な動きをしないことがポイント。雑巾の幅をいかして、往復をせずに拭いていきましょう。同じ場所をなんども拭くことで、汚れをひきずったり残したりする原因になります。