【接道義務】住宅を建築するために必要となる「6つの道路」とは?
住宅を建築するときに守らなければならない「接道義務」
原則として住宅の計画敷地は幅員4メートル以上の道路に2メートル以上接していなければならないという制限のことをいいますが、建築基準法では道路について明確に定義されています。
この定義について理解しておかなければ建築計画の際に思わぬ問題が生じることがあります。
今回は接道義務における道路の定義についてわかりやすく解説します。
接道義務とは
建物を建築するためには建築基準法という法律の規制を遵守する必要があります。
建築基準法の中でもさまざまな規制がありますが、特に重要な項目の一つに接道義務(建築基準法43条以下)というものがあります。
接道義務とは、「建物を建築するためには、敷地が道路に接していなければならない」というものです。
敷地が道路に接していないと、建築行為ができないという大変不利な物件になってしまうことになります。
【注意!】どんな道でもいいわけではない
敷地が道に接しているからといって直ちに安心できるわけではありません。
建築基準法43条では、接道義務を満たすことのできる6種類の道路を定義しています。
この6種類の道路は、「建築基準法上の道路」と区別して呼ぶこともあり、この定義に該当しない道路(非道路)にしか接していない場合、接道義務を満たしているとは言えないため、建築することができないのです。
そのため、土地を取得する際は、接している道が建築基準法上の6つの道路のうちいずれかに接している、ということを確実に確かめなければなりません。
建築基準法上の「6つの道路」とは?
住宅を建築するためには、建築基準法上の道路に一定以上(原則として2m以上)の長さで接していなければなりません。
では、建築基準法で定義している「6種類の道路」にはどういうものがあるのでしょうか。
道路の種類(道路種別)について解説します。
①道路法による道路(1項1号道路)
1つめに定義されている1項1号道路は、「道路法」という別の法律で道路として認定されているもののことを言います。
この道路はいわゆる「公道」とよばれるもので、国道・県道・市町村道などがこれに該当します。
「道路」と言われてイメージするような一般的な道路が1項1号道路ですね。
1項1号に該当する道路は、原則として道路名(国道○号、県道○号線など)が指定されており、県や市町村の役場の道路課が管理していることが多いです。
ちなみに、道幅4メートル以上(車がすれ違えるくらいの幅)がなければ1項1号道路として認められません。
国道や県道、市町村道として認定されており、なおかつ道幅が4メートル以上あれば接道の条件はクリアということになります。
②開発道路(1項2号道路)
「開発道路」とよばれる1項2号道路は、土地区画整理事業・宅地造成事業・再開発事業などによって新しく築造された道路のことをいいます。
大掛かりな開発行為の事業の一環としてつくられる道路であるため、県や市町村などの行政が関与していることも多く、将来的に公道(1項1号道路)に引き継がれることが前提となっているケースが一般的のようです。
ただし民間企業の宅地分譲業者が開発許可を受けて1項2号道路をつくった場合、公道に引き継がずにその企業がそのまま管理者となっているケースもあります。
このような場合は水道管工事などの際に管理者の承諾が必要となることに注意しなければなりません。
開発道路(1項2号道路)の確認事項
□道路の所有者(管理者)
□将来的に公道に移管する予定の有無
□民間管理の場合、道路掘削工事を行う際の承諾窓口、条件等
□インフラ(電気・水道等)の設置状況
③既存道路(1項3号道路)
既存道路とよばれる1項3号道路は、都市計画区域の指定前にすでに存在していた幅員4メートル以上の道路のことをいいます。
一般的に既存道路は個人や会社などの民間が所有する私道となっていることがほとんどです。
(県や市町村が所有している場合は1項1号道路になる可能性が高いため)
もし仮に既存道路の所有者が県・市町村となっている場合、何らかの理由があって公道として認められていないか、管理者が行政主体となっていないということが考えられます。その経緯については確認しておくべきでしょう。
敷地に接している道路が既存道路だった場合、建築に必要な道路掘削工事をするための承諾等の手続きが必要となることがあるという点に注意しましょう。
既存道路(1項3号道路)の確認事項
□道路の所有者(管理者)
□インフラ(電気・水道等)の設置状況
□道路掘削工事を行う際の承諾窓口、条件等
④計画道路(1項4号道路)
「計画道路」は、都市計画等によって将来的に新しく築造される予定の道路のことをいいます。
沖縄県内においても、道路拡幅計画によって土地の一部が行政に買収されるという話を聞いたことがある人もいるのではないでしょうか。
このように買収された土地の部分(もしくは買収される予定の部分)が計画道路(1項4号道路)と呼ばれることになります。
1項4号道路に該当する条件の1つに「2年以内に事業の執行が予定されているもの」というものがありますが、あくまで予定であるため、2年を超えたとしても1項4号道路としての効力は持続します。
むしろ計画道路が完成するまでに2年以上の期間がかかっていることが多く、中には道路計画が決定してから十数年~地権者と折り合いがつかずに道路拡幅事業が思うように進んでいないというケースも多々見受けられます。
敷地が1項4号道路に接している場合は、道路計画がどのように進行しているのか、自分の敷地の一部が4号道路に含まれているのかといったことを把握しておくようにしましょう。
⑤位置指定道路(1項5号道路)
位置指定道路は、民間業者などが行政庁から許可(指定)を受けて築造した新たな道路のことを言います。
主に宅地販売業者が大きな土地を区割りして分譲した際につくられた道路が多く、私道(民間名義)となっているケースがほとんどです。
そのため位置指定道路においても道路の掘削工事などを行う際に民間の管理者の承諾を得る必要があります。
開発道路(1項2号道路)の確認事項
□道路の所有者(管理者)
□民間管理の場合、道路掘削工事を行う際の承諾窓口、条件等
□インフラ(電気・水道等)の設置状況
位置指定道路が古いと、「資料の境界が曖昧となってる」「認定基準が変わった」などの理由で稀に行政から現況の復元を求められることがあります。
現況復元とは、位置指定道路を現行法律の基準と一致させることをいいます。
個人が古い位置指定道路を新しく復元しなおすというのは現実的ではないことがほとんどです。
古い道路位置指定に接している場合は旧建物からの再建築ができないケースがあるということも念頭に置き、資料を確認するようにしましょう。
⑥みなし道路(2項道路)
みなし道路と呼ばれる2項道路は、都市計画の指定前にすでに存在していた道路で、幅員が4メートルに満たないものをいいます。
本来、都市計画区域内で住宅を建築するためには敷地が幅員4メートル以上の道路に接していなければならないというのが大前提であり、道路が条件を満たしていないのに建物を建築すると違法状態となってしまいます。
しかし建築基準法ができる前から存在していた住宅に関しては、後からできた法律に適合しないという理由で違法としてしまうとたくさんの人が困ってしまいます。
そこで都市計画が指定された時点で公共道路として機能していた道については4メートル未満でも「みなし道路」と認定し、昔からの住民に対して救済を図っています。
新しく建築する時にセットバックが必要となる
みなし道路(2項道路)に接している土地に新たに建物を建築するためには、敷地を一部道路面積として提供しなければなりません。
このことを「敷地のセットバック」といいます。
近隣の建物が新しく建て替えらえれていくにつれて全体のセットバック面積が増えていき、最終的に4メートル幅員の道路が形成されることになります。
セットバックは、中心から2メートル
セットバックするときは、上の図のように現況道路の中心線から2メートルの平行線を引いた部分が新しい道路境界線になります。
セットバックされた部分の所有権については原則として施工主の名義になりますが、公共の道路として使われることとなるため自己使用(花壇を置く、駐車場にするなどの利用)ができなくなります。
また、セットバック部分は建築上の敷地面積に合算することもできないため、建蔽率や容積率の計算を行う際もセットバック部分を除いた面積をベースとして算出することとなり、道路斜線制限などについてもセットバックラインが基準になります。
セットバックされることによって想定していた建物が建築できないなどのトラブルの事例もありますので、購入を検討する土地がみなし道路に接している場合は注意するようにしましょう。
道路は土地の価値を決める大切な要素の一つ
本記事では建築基準法において6種類の道路が定義されていることについて解説しました。
一口に道路といってもさまざまな道路があり、どのような道路と接しているかによって土地の価値が大きく左右されることがあります。
道路の種別や現況によっては想定していた建物が建てられないということもあり得ますので、土地を購入するときは注意深く確認するようにしましょう。
コンサル未来では設計の専門的な観点から、敷地に面する道路の課題や解決策を提案することができます。
建築をお考えの土地の前面道路についてご不安な点がございましたら、お気軽にコンサル未来までお問合せください。