仮換地・保留地て何?土地区画整理の基本について解説します。
土地探しをしていると、「仮換地」「保留地」という言葉を耳にすることがあると思います。
仮換地や保留地は土地区画整理事業地内における土地の概念です。
通常の土地と性質が異なるため取引の際に少し分かりづらいという人も多いですが、住宅用地として購入する場合は内容をしっかりと理解しておく必要があります。
今回は土地区画整理事業について解説します。
土地区画整理事業って何?
そもそも土地区画整理事業とはどのようなものなのでしょうか。
言葉は聞いたことはあるけど普通の土地と何が違うのかわからないという人も多いかもしれません。
まずは土地区画整理事業の基本的な概念について解説します。
住みやすい“街”を作るための事業
土地区画整理事業は、快適で住みやすい街をつくる手法の一つです。
たとえば昔ながらの市街地では狭い道路が入り組んでいたり、建物どうしの境界線があいまいになっていたりと何かと不便なことが多いです。
このような旧市街地を便利で綺麗な街として生まれ変わらせるためには、街全体の道路整備や公共施設の築造など大掛かりな開発が必要となります。
しかしこのような大きな開発は、一部の民間の力だけだとなかなか実現が難しいことでもあります。
そこで街の地権者がみんなで協力して街を一度リセットし、一から街を作りあげていくための事業を発足します。
これが「土地区画整理事業」の基本的な考え方です。
沖縄県内の土地区画整理事業
沖縄県内においても土地区画整理事業の導入事例は数多くあります。
先ほど紹介したように旧市街地における導入事例も多いですが、沖縄で特に多く見受けられるものが「米軍基地返還の跡地」を利用した土地区画整理事業です。
軍用地跡地利用計画では、米軍駐留地として国に土地を貸していた地権者が返還にともない組合を発足し、土地区画整理事業を通して新しい市街地を形成していきます。
最近の跡地利用事例としては、北谷町の桑江・伊平エリアや、ライカムエリアなどが記憶に新しいと思います。
その他にもたくさんの土地区画整理エリアがありますので、一例を紹介します。
【沖縄県内における土地区画整理事業の事例】 那覇市 浦添市 宜野湾市 沖縄市 北谷町 (※その他たくさんの事例があります。) |
土地区画整理事業のリーダー(施工者)
たくさんの地権者の意見をまとめてスムーズに事業を遂行していくためには、リーダー(施工者)の存在は不可欠です。
土地区画整理事業における施工者は主に県や市町村などの公的機関が主体となる「行政施工」のものと、組合などの私人団体が主体となる「民間施工」のものがあります。
施工者がどの機関になっているかによって地権者の窓口が変わることになりますので確認が必要です。
土地区画整理ってどんな土地?
土地区画整理事業地内で購入できる土地には「仮換地」と「保留地」というものがあります。
それぞれがどういう性質なのかということについて解説します。
「仮換地」とは?
土地区画整理事業が開始されると今までの土地(従前地)は使えなってしまいます。
しかし土地区画整理事業の工事は数年~数十年かかることもあり、それらが終わるまでの間、自分の土地が全く使えないとなると地権者にとってはとても不便です。
そこで自分の土地が使えない代わりに「仮の土地」を使う権利が指定され、従前の土地の所有者はそこが自由に利用できるようになります。
この、仮の土地のことを「仮換地」といいます。
仮換地は土地区画整理事業の完了時に「換地処分」という手続きが行われ、そのときに「仮の土地」から「本当の所有地」に切り替わることとなります。
また、換地処分が行われることによって、今までの土地(従前地)の権利は完全に消滅することとなります。
土地区画整理事業が行われている間、実は「今までの土地(従前地)」と「仮換地」という2つの土地の権利が同時に存在しているという特殊な状況であることを理解しておきましょう。
「保留地」とは?
一方、土地区画整理事業が行われることによって全く新しく生まれる土地のことを「保留地」といいます。
土地区画整理事業を完成させるためには莫大な費用がかかりますが、保留地をつくることでその土地を売却して事業費に充てることができるようになり、より良い街づくりができるようになるというメリットがあります。
仮換地は必ず減歩される
住みやすい街をつくるためには、道路を拡幅したり、公園などの公共施設をつくったり、財源を確保するために保留地をつくったりする必要があります。
それらの面積を確保するためには、もともとの従前地から少しずつ面積を分けてもらう必要があります。
そのため昔から土地を持っていた人からすると、土地区画整理事業によって自分の土地の面積がどれくらい減るのかというのは気になるところだと思います。
土地区画整理事業による面積減歩は避けて通れないデメリットですが、それ以上に街が住みやすくなって土地そのものの価値があがるというメリットがあるということも理解しておきましょう。
土地区画整理内で土地を取引する場合
土地区画整理事業がまだ完了していなくても土地の取引は可能です。
そのため、これから住宅用地を探すという人も、もしかしたら区画整理が完了していない土地(仮換地や保留地)の物件を検討するということもあるかもしれません。
区画整理地で取引を行う際に確認しておくべきことについて紹介します。
区画整理事業が今、どの段階なのかを確認
土地区画整理事業が完了する期間は短くても数年、長いところだと数十年たっても換地処分まで至っていないケースもあります。
そのため、事業が今どの段階まで進んでいるのかというところはチェックしておく必要があります。
特に、まだ使用収益開始がされていない土地については、すぐに建物の建築ができません。
「土地を購入したけど数年後にならないと建築できない」というケースも珍しくありません。
最低でも「使用収益が開始されているか(いつ開始されるか)」「換地処分はいつの予定か」という情報は押さえておくようにしましょう。
面積の確認
先ほど説明したように、土地区画整理事業地内では従前地から面積の減歩があります。
土地情報を確認する際、区画整理の面積を必ず確認する必要があります。
土地の情報を確認する際、間違って従前地の面積を認識してしまうと「想定していいたよりも土地が小さい」ということになってしまいますので注意しましょう。
必要な手続きの確認
土地区画整理事業地内で建物の建築をするにあたって、通常の建築確認申請手続きのほか、区画整理事業側での手続きも必要になります。
どんな手続きが必要になるのかを事前に把握しておくようにしましょう。
融資を受ける銀行側への確認
土地を購入するにあたって、融資を受ける銀行側へ確認しておくようにしましょう。
土地区画整理事業地内ということで融資が不利になるということは基本的にありませんが、必要書類や手続きなど若干異なりますので事前に確認が必要です。
また、購入する土地が「保留地」の場合、担保設定などの登記手続きができないので、融資実行の際の手順も多少異なりますので注意しましょう。
土地区画整理エリアで土地を購入するメリット
土地区画整理事業は、街をよくするために発足される事業です。
そのため、区画整理が入っていない土地に比べると公衆道路や近隣公共施設がしっかりと整備されており、住みやすい環境が整っているという魅力があります。
土地区画整理事業エリア近隣には大型商業施設や医療施設が誘致されるケースも多々あるため、立地面でのメリットは大きいのではないでしょうか。
また、上下水道のインフラや、個別の土地の造成工事なども完了された状態で引き渡されるため、住宅を建築するにあたっては大きな外構費用が発生しないというのもメリットの一つです。
土地探しの際の豆知識としてご参考になれば幸いです。