【住宅ローン控除】改正によってどんな影響がある?
2022年4月に住宅ローン控除の内容改正があったことは記憶に新しいかと思います。
今回の改正によって控除率が1.0%から0.7%に引き下げられ、さらにローン残高の上限額についても4,000万円から3,000万円に引き下がられることとなりました。
これによって「還付される金額が減った!」と感じている人も多いと思いますが、実は条件によっては今までよりもメリットがあるケースもあります。
今回の改正によって生じる影響について考えてみましょう。
住宅ローン控除とは
住宅ローン控除は、住宅ローンを利用した人の所得税・住民税から「住宅ローン残高×控除率」に該当する金額が控除されるという制度です。
控除額は毎年末時点でのローン残高を基準に算出し、年末調整時に現金で還付されます。
還付はあくまで多く払いすぎた税金が返ってくるというものです。
「現金がもらえる」という制度ではないということに注意です。
今までの住宅ローン控除のルール
改正前(2022年3月以前)の住宅ローン控除の基本的なルールは下記の内容となっていました。
①控除率1.0%
②ローン残高上限4,000万円
③適用期間10年間
たとえば4,000万円以上の住宅ローンを組んだ際、毎年の控除額は4,000万円×1.0%=40万円となり、10年間合計で最大400万円も払った税金が返ってくるというものでした。
改正前であれば1~10年目の合計で最大400万円の控除が受けられていたのです。
非常に大きな恩恵を受けられていたことが分かると思います。
2022年4月からの住宅ローン控除
では、改正によって何が変わったのでしょうか。
新・住宅ローン控除の基本的なルールは下記のとおりです。
①控除率0.7%
②ローン残高上限3,000万円
③適用期間13年間
基本の適用期間は10年から13年に延長したものの、控除額・ローン残高上限ともに引き下げられており、何だか控除される金額が少なくなりそうに見えます。
実際に計算してみてもわかるように「ローン残高の3,000万円×0.7%=21万円」となり、13年間控除を受けたとしても総額で273万円となります。
改正前であれば最大控除額が400万円だったことを考えると、損をしているように感じるかもしれません。
しかし、実は今回の改正が必ずしもデメリットになるとは限りません。
払っている税金は年収によって違う
住宅ローン控除は、支払った税金から一定の金額を返してもらうことができる制度です。
つまり自分が支払っている税金以上の恩恵を受けることはできません。
所得税・住民税の金額は本人の収入によって決まりますので、今回の改正によって受ける影響は本人の収入によっても大きく変わると言えます。
所得税・住民税は所得控除等の適用状況によっても納税額が異なってくるため一概に言えませんが、概算だと下の表のような区分になります。
年収300万円 |
約16~17万円 |
年収400万円 |
約25~26万円 |
年収500万円 |
約37~38万円 |
年収600万円 |
約50~51万円 |
年収700万円 |
約67~68万円 |
年収800万円 |
約92~93万円 |
たとえば年収700万円で毎年67万円の税金を払っている人が5,000万円の住宅ローンを組んだとします。改正前であれば4,000万円×1.0%=40万円が毎年控除され、10年間で400万円の恩恵を受けることができました。
改正後だと、控除額が3,000万円×0.7%=21万円に引き下げられ、13年間で273万円の控除しか受けられなくなってしまいました。
では、年収が300万円のケースだとどうでしょう。毎年払っている税金が25万円であれば、毎年の控除額は最大25万円になり、10年間の最大控除額は250万円です。
ところが改正後の控除率で計算すると、21万円×13年で最大控除額が273万円になります。 年収700万円では最大控除額が約130万円少なくなったのに対して、年収400万円だと約20万円大きくなりました。
影響は年収によって大きく変わる
住宅ローン控除は自分が支払った税金の中から一定の金額が返ってくるというものです。
控除率が引き下げられたことによって、税金を多めに払っている高所得者ほど悪い影響がありますが、一般的な所得者の場合はむしろ最大控除額が増えるということも珍しくありません。
また、先ほどの例は「住宅ローン借入額5,000万円」で計算していますが、これが4,000万円、3,000万円となってくるとローン残高の天井が下がってくることとなりますので、改正による影響をもっと受けることになります。
今後はローン残高の上限が更に引き下げられる!
2022年4月の改正によって控除率とローン残高が引き下げられたというお話をしましたが、実は、今後さらにローン残高の上限が引き下げられる予定があります。
現時点での決定事項として、2024年には一般住宅のローン残高が3,000万円から2,000万円に引き下げられることになります。
控除率は据え置きですので、単純に最大控除額が減ることになってしまいます。
省エネ住宅などは上限が異なる。
一方で、「長期優良住宅」「ZEH水準の省エネ住宅」「省エネ基準適合住宅」については、一般のローン残高上限よりも高く設定されています。 それぞれ下記のとおりです。
長期優良住宅 |
4,500万円 |
ZEH水準省エネ住宅 |
3,500万円 |
省エネ基準適合住宅 |
3,000万円 |
一般住宅 |
2,000万円(2024年~適用期間が10年) |
2025年には省エネ基準適合の義務化も予定されていますので、今後は上記の3種類の住宅が主流になってくるでしょう。
このような区分がされている背景には、国が推進する「住宅省エネ化」が背景にあります。
一般住宅だとローン残高上限が2,000万円なので、10年間の最大控除額は140万円です。しかし長期優良住宅だと4,500万円×0.7%×13年=410万円となり、その差は歴然となります。
上限いっぱいに控除額が適用されるかは収入などによっても異なりますが、これから住宅を取得する予定の人は今から省エネ住宅や優良住宅を検討するのも一考の余地があると思います。
(省エネ住宅・ZEHについてはこちらをご覧ください。)